えびす講と縁起菓子

カテゴリ:季節の行事

今回は松本市民であればお馴染みの『えびす講』について、お話をしたく思います。また「えびす講」って?「講」とは?と、思われる方も多くいらっしゃると思いますので、一緒にお話いたしますね。

恵比寿講と縁起菓子について

毎年、四柱神社で行われる『えびす講』。
長野県のえびす講といえば、毎年11月23日に盛大に行われる長野市の『長野えびす講煙火大会』が有名です。この時期では全国的にも珍しい、晩秋の花火大会も行われており、2017年の同イベントでは、13,000発もの花火が打ち上げられるなど、全国屈指の花火大会として名が知られています。
一方の松本市では、平成10年に「えびす講」が松本に復活しております。松本も商人の町ですから商売繁盛・五穀豊穣・開運招福祈願は必要です。四柱神社境内で、毎年11月19.20日にえびす講がおこなわれています。

『えびす講』がどういうお祭りであるのか、ご存知ではないかとも多いと思います。
『えびす講』とは、10月20日もしくは、11月20日に催される民間行事であり、秋の季語としても知られています。開催日になると全国各地の神社で縁起物が売られ、中には神輿を担いだり、花火が上がったりといった催しを行うところもあります。
「えびす講」のえびすは、無論七福神における商売繁盛、五穀豊穣をもたらす神様のことで、七福神の中で唯一日本由来の神様です(その他の神様は中国やインドなど他国の神様です。)また、えびす講の「講」とは宗教行事を行う結社や行事や会合のことを指しております。
行事の内容は前記した通り、神社の出店で縁起物を販売するのが主で、熊手や福笹が店頭に並びます。ちなみに熊手とは農作業や掃除の際に使う道具のことで、物をかき集めることから「福や金運を集める」として招福の縁起物となった様です。さらに福笹は竹と笹でできた縁起物のこと。竹は真っ直ぐに伸びる植物なので、商売繁盛にご利益があるとされます。さらにえびす講の開催に合わせ、商業従事者や商業団体が特売イベントを催すケースもあります。また、地域によってはお祭りとイベントの両方を含めて「えびす講」と称するところもある様です。

なお、余談となりますが、えびす講は主に陰暦の10月10日、10月20日、11月20日、1月10日、1月20日などに行われますが、その中でも1月10日に行われる「市」のことを「十日えびす」と言います。日程は場所によって若干の差はありますが、1月7日から15日前後に行われるえびす講のことを指し、この呼び方は主に西日本で定着しているものだそうです。行事の内容や目的はえびす講と変わらず、えびす様を祀り、商売繁盛、家内安全を祈願する為のものであり、縁起物が売られるなどの催しが行われます。

ちなみに、熊手を販売する点や、開催時期が近いことから、えびす講と酉の市は何か関連性があるのでは? と思われる方が多いと思いますが、実はこの二つ、「全く無関係」です。酉の市は大鳥神社の祭礼として行われるものなので、関連性はございません。

開運堂の金津波

今回ご紹介するのは、「金津波」。松本・恵比寿講の縁起菓子です。
伝統行事・松本恵比寿講が開催される11月の第3週末の11月17日・18日・19日のみ販売いたします。1年でわずかこの3日間だけ。
「金津波」の由来ですが、全国各地で通年売られる和菓子の金つば(金鍔)とは、生い立ちが異なり、松本の経済が農業で支えられていた時代のお話に由来があります。
農家は豊穣の秋にまとまった収入を得ていました。

山に雪が降る頃になると冬支度の買い出しに、馬車や荷車を引き町(松本)へ繰り出します。
商店では11月19日・20日の「恵比寿講」に太い青竹に恵比寿・大黒・大判・小判などのの縁起物を吊るし街中を飾り、一年中で最も盛大な売り出しをしました。
大きな売り上げを「お金の津波」に例え、縁起菓子「金津波」を販売しました。
深志神社境内の本町恵比寿殿に参拝し、「金津波」を買う事が楽しみの一つで、開運堂は店頭で徹夜で作り、一晩で10万個も売ったと伝え聞いています。

生活と近代化と共に恵比寿講は衰退し、今は「金津波」が当時の名残です。伝統行事は郷土の歴史を伝える貴重な財産です。この時期に「金津波」を作る事で松本の歴史と文化の伝承になれば幸いです。

https://www.kaiundo.co.jp/products/detail/2616